++ ACアダプタ10V850mA、無負荷でも熱い シュールド・ウェーブ++
2018.8.26初版
ACアダプタ10V850mA、無負荷でも熱い シュールド・ウェーブ
近所のブックオフで見つけたモノです。
クリックで原寸大
さっそく分解します。
内部はあっさりとしたもので、変圧器トランスと、申し訳程度の整流回路基板があるだけです。
トランスの方はずっしり重く、巻線も定格で謳っている850mAは流せそうな太さです。
ところが、直ぐに積層鉄心(コア)が熱くなることに気付きます。
マグネットワイヤーであるエナメル線の発熱はありません。
原因を切り分けるべく、
整流回路基板も切り離して、トランス単体でAC100Vに繋いでも熱くなることに変わりありません。
そこで、
テスターで電磁鋼板間の絶縁を調べると、ほとんど導通状態です。
絶縁皮膜のコーティングが施されてないモノを使っていることが分かりました。
※ピカピカの金属色そのままであって、黒っぽいコーティングは一切なし。
これだと渦電流損によって、コアが発熱するのは当然であって、
無負荷でも鉄心が熱くなる原因がこの鉄心にあることが確認できました。
このアダプタの製造を請け負ったメーカーはコスト削減を要求され
このような鋼板を使わざるを得なかったのかも知れません。(台湾製)
珪素鋼帯の理想は鉄損(渦電流損)が少なく、高い飽和磁束密度であるモノですが
このトランスで使われている素材は、それとはほど遠いモノかもしれません。
他にマグネットワイヤーの巻き方が雑です。
※ただし、温度ヒューズは組み込まれています。
問題となっている発熱する方の電磁鋼板ですが、
ちゃんとした電磁鋼板メーカーから調達したモノなら絶縁皮膜コーティングされた鋼材が出荷されるので
ひょっとしら、このトランスの鉄心はそのようなちゃんとしたモノではなく、
安価な電磁鋼板もどきを提供するメーカーのモノかもしれません。
というのは、電磁鋼板の絶縁皮膜には耐熱性があり防錆力もあって、
皮膜が鋼板に強固に密着しているので切断、打抜きでも剥がれない。
くわえて皮膜が薄くても高い層間抵抗を提供する・・・などなど、
電磁鋼板メーカーでないと実装できない性能・機能を
トランス組み立てメーカーが後で付け加える必然性も合理性もないので
このトランスにはそういう電磁鋼板は初めから使わないことだったことが推察されます。
【 コア発熱に関わる電力を測る 】
二次側巻線はオープンにして、10.56V(真の実効値)
一次巻線に1.9Wが有効電力分として供給されています。(銅損分と鉄損(主に渦電流損)も含む)
渦電流損はトランスの二次巻線に繋がった抵抗負荷とみなすと理解すればよく
印加電圧と同相になります。
励磁回路の励磁コンダクタンスに流れる鉄損電流について - 励磁... - Yahoo!知恵袋
渦電流で発生した磁束φ1が磁化電流の主磁束φをその分減少させるので、それを補うように(元の磁束φの量を保つため)電源から渦電流分の電流が」一次回路に流れて、コンダクタンスとして見えるようになります
(二次巻き線に繋がった抵抗に誘導で電流が流れて、それが一次側からは一次換算二次抵抗に見えるのと同様)
ちなみにこのトランスと同じ定格(18VA)の他のメーカーNitendo HVC-002(日本製)のトランスでは
消費電力(有効電力)が1.0W、皮相電流30mAであり
(※発熱トランスの方をもっと正確にもう一桁追加して真の実効値で読むと
ワットメータが示す0.04Aがもう少し正確に測ると0.0445〜0.0451Aだとわかる。
(この変動は柱上トランス電圧変動の為)
励磁電流を多めに流すこの手のクラスでは1.0W程度が一般的といえそうです。
そのHVC-002の一次巻線のインダクタンスが1.12Hあるのに対して、
この熱くなるトランスの一次巻線インダクタンスは845mHしかなく
巻数が少ないことが察せられます。
※但し、鉄心の大きさは殆ど同じであり厚みだけがやや熱くなるトランスの方が厚いです。
ちなみにHVC-002の方の発熱は暖かくなる程度です。
※その鉄心には黒っぽい絶縁皮膜コーティングが施されています。
消費電力1.9W(有効電力分)
皮相電流0.04A(小数点以下2桁までしか表示できないので正確さはやや劣る)
クリックで原寸大
もくじへ